健全育成概論

健全育成の概念は、「すべての子どもの生活の保全と情緒の安定を図って、一人ひとりの個性と発達段階に応じて、全人格的に健やかに育てる」ことです。具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。

1.身体の健康増進をはかる

日常生活で、自立して行動できるような体力(行動体力)と病気にかかりにくいような抵抗力(防衛体力)を高め、健やかな身体をつくること。

 子どもが日常の生活を営む上で十分に行動できる体力(行動体力)を培うことである。その結果として病気にかかりにくい抵抗力(防衛体力)も養われるのである。
 幼児期から小学生にかけては、行動体力の中でも調整力の領域(協応性・敏捷性・速度・柔軟性・平衡性)をのばすように心がけたい。
 特に協応性といわれる、身体の異なる部分が異なる動きをする時にそれを融合させる能力である。例えば、ピアノを弾く左右の手の動き、縄跳びの際の手足の動きなどであり、子どもには一番大切な体力だといわれている。手指で遊ぶレクリエーションの意味はここにある。
 次に、重い頭を支えて歩けることで人類が発展したように平衡性(バランス)を高めることが有効である。①動的バランス-不安定な物の上に立つ(一輪車等)②静的バランス-細い物の上を歩く(平均台等)③物的バランス-物の平衡をとる能力(ほうき立て等)、が重要である。
 最近の子どもが体力がないというのは、幼児期から日常生活の中で、運動遊びの機会と種類が少ないのである。「経験しないものは発達しない」ということを児童厚生員が熟知しなければならない。
 体力づくりで大切なことは、子どもも大人も楽しければ行動するということである。つまり身体を動かしたくなるような知的欲求を満たす刺激がまず用意されねばならない。そして面白ければ興味・関心を持ち、自発的に繰り返すようになるものである。
 優勝することや、プロをめざすことが児童館の活動ではない。スポーツにも本来楽しむという意味があるのであり、身体を使う遊びに興味を持たせることを主眼にした活動が大切であろう。

2.心の健康増進をはかる

不安感、緊張感、欲求不満感などを持つことがない安定した精神状態を保ち、人格的な発達をはかること。

 子どもが毎日の生活の中で、いたずらに不安感、緊張感、欲求不満感などを持つことがなく安定した状態で、自分が考えたこと感じたことを、自由に且つ、十分に表現でき、子ども自身が自己の持つ能力を最大に発揮して、意欲的に生活できるように接していくことである。
 心が健康でないと、ものの見方や感じ方がゆがみ、問題行動が起きる。さまざまな問題行動の発生する背景には、受容的な人間関係を欠いた淋しい幼児期が暗い影を落としている。

3.知的な適応能力を高める

子どもの能力や個性に応じて可能な限りの知識と技術を獲得し、生活する上で必要な能力を高めること。

 子どもの能力に応じて、可能な限りの知識と技術を獲得させ、その知識を利用して社会に適応した生活が営めるような能力を高めることである。子どもが現実生活の中で困難な問題に直面した時、その問題を解決できるように、自分の持っている知識を働かせられるように導くことである。
 子どもが成人して日本で生活していくためには、この社会の約束事や知識を知らなければならない。また、先人たちが考えてきた生活の知恵や技術をできるだけ身に付け快適に暮らしてゆかなければならない。さらに、この社会が発展することに力を出せる品性も身に備えてもらいたいものである。

4.社会的適応能力を高める

発達段階に応じて、自分の所属するさまざまな集団生活の場において、他者との協調性や人間関係能力を高めること。

 現代人の生活は人間関係が基調である。子どもの発達段階に応じてより良い人間関係を保ち、個人的生活の自立と同時に、人間関係をスムーズにし、自分の所属するさまざまな集団生活を安定させるとともに発展させられる知識と技術の能力を高めることである。これが一人ひとりの子どもに望まれるのである。
 3歳児は3歳児なりに、また小学生や中学生はその年齢なりの発達段階に応じて、より良い人間関係を保ち、家庭の中や学校等の集団生活の中で適応できるための知識や態度を身に付けることである。
 集団で生きることを選択した人類として、幼少期から真の社会的適応能力を育むことが、責任ある成熟した社会づくりに役立つことを児童館は啓発して行きたい。

5.情操を豊かにする

美しいもの(美的情操)、善いおこない(倫理的情操)、崇高なもの(宗教的情操)、つじつまの合うこと(科学的情操)などを見たり聞いたりした時に素直に感動する心を豊かにすること。

 情操とは快・不快を感じる心の反応である。すなわち感情の一種であって、文化的価値のあるものに対して感じる快・不快の反応をいう。
 情操を豊かにするとは、どのような意味であろうか。
 美的情操を高めるとは、美しいものを見たり、聞いたりすると快適な気持ちを抱き、それらを求める気持ち(反応)を高めることである。
 倫理的情操を高めるとは、人が善い行いや正しいことをするのを見たり、聞いたり、または自分自身で善いことをすると快適な気持ちになり、それらを求める気持ちを高めることである。
 知的情操を高めるとは、つじつまの合うことがらを見たり、聞いたり、または自分自身が実行したりすると快適な気持ちになり、さらにそれを求める気持ちを高めることである。

 

これら、五つの要素を、バランスよく子どもたち一人ひとりの個性と発達に応じて積極的に増進していくことが、普遍的健全育成観といえます。